牛島司令官辞世の句を美化する中谷防衛相発言の撤回も求める
２０２５年５月９日 日本平和委員会
自民党の西田昌司参議院議員が５月３日の沖縄県那覇市での「憲法シンポジウム」で、沖縄戦に動員され犠牲になった生徒らを追悼する「ひめゆりの塔」の展示説明内容について、「あそこはひどいですね。説明ぶりを見ると、要するに日本軍がどんどん入ってきて、ひめゆりの部隊が死ぬことになったと。そしてアメリカが入ってきて沖縄は解放された。そういう文脈で書いている」などと批判したことに対し、満身の怒りをもって抗議し、その撤回を求める。
第１に、これは事実にもとづいていない。ひめゆり平和祈念資料館の館長は、そうした展示は「過去も現在もない」と明言している。西田議員も「印象」であって、具体的な記述は覚えていないなどと、無責任極まりない弁明をしている。
第２に、これは何よりも、沖縄戦とそこでの日本軍の役割を美化し、歴史を歪める立場からの許しがたい批判である。西田氏も７日の記者会見で、「沖縄戦は民間の方もたくさん犠牲になったが、助けるために日本軍が入った」などと述べている。しかし、沖縄戦は、国体護持を至上命令とする日本軍が本土決戦を遅らせるため沖縄で時間稼ぎの持久戦を続け、県民に「軍官民共生共死」を強要し、本島南部に撤退して住民を巻き込んだ激しい地上戦を繰り広げることによって、ひめゆりの生徒はじめ県民の４人に１人が犠牲となる悲劇を生み出したのである。この悲劇を生み出した天皇制政府と日本軍の役割を美化し、日本軍が沖縄県民を助けに行ったと描き出せというのが、発言の真意であることは明らかである。それは、この講演が沖縄県神社庁、神道政治連盟沖縄県本部、日本会議沖縄県本部など、かつての侵略戦争を美化する勢力でつくる実行委員会主催の改憲集会で行われたことにも示されている。これを共催した自民党県連の責任は重大である。このような沖縄戦の犠牲者を冒涜する歴史の歪曲は、断じて許されない。自民党は、責任をもって謝罪し、西田氏の発言を撤回させ、議員を辞職させるべきである。
こうした沖縄戦と日本軍の役割を美化する姿勢は、自民党政権に染み付いたものである。それは、沖縄戦を指揮した旧日本軍第32軍の牛島満司令官が詠んだ、「秋待たで 枯れ行く島の 青草は 皇国の春に 蘇らなむ」との辞世の句を、陸上自衛隊第１５旅団（那覇市）がホームページに掲載し続けていることへの県民の批判に対し、中谷元防衛大臣が「平和を願う歌だ」などと美化し、削除を求めようとしないことにも示されている。この句が天皇のために県民が犠牲になることを当然視する許しがたい意味が込められていることは明らかである。
私たちは、こうした沖縄戦と日本軍の美化が、日米軍事同盟強化・大軍拡のもと、沖縄・南西諸島をアメリカの戦争への協力のための戦場としかねない軍事要塞化が進められていることと一体に進められていることを深く危惧している。再び沖縄戦を繰り返す道を、断じて許してはならない。
私たちは、西田発言と中谷防衛大臣の発言の撤回を求め、沖縄戦美化の一切の策動と沖縄・南西諸島の軍事要塞化、大軍拡路線の中止を強く求めるものである。
