殺傷兵器輸出解禁、「死の商人」国家への道に反対し、「防衛装備移転3原則」と運用指針改定の閣議決定の撤回を求める
2023年12月23日 日本平和委員会
政府は12月22日、武器輸出のルールを定める「防衛装備移転3原則」と運用指針の改定を閣議決定した。これは、武器輸出路線に道を開いた安倍政権下の「防衛装備移転3原則」(2014年)をさらに改悪し、殺傷兵器の輸出解禁を本格化しようというものである。このような憲法の平和原則を根本から蹂躙する重大な決定を、臨時国会閉会後、密室の与党協議にもとづく一片の閣議決定で強行したことは、断じて許されない民主主義蹂躙の暴挙であり、撤回すべきである。
そもそも日本国憲法第9条は「武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄」し、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」ことを明記した。この下で武器輸出など許されないことは明らかである。だからこそ歴代自民党政府も1976年の「三木三原則」によって武器輸出を原則禁止してきたのである。それを原則解禁に大転換したのが2014年の安倍政権による閣議決定だが、そこでも殺傷能力のある武器の輸出は国際共同開発・生産の場合に限られ、同盟国などへの輸出は「救難・輸送・警戒・監視及び掃海」の「5類型」に制限されたのである。
今回の閣議決定は、昨年12月16日に閣議決定された大軍拡路線推進の「安保3文書」が、「防衛装備移転や国際共同開発を幅広い分野で円滑に行うため…制度の見直しについて検討する」(「国家安全保障戦略」)、「防衛装備移転については…販路拡大を通じた、防衛産業の成長性の確保にも効果的」(「防衛力整備計画」)とした方針に沿って、これらの制約を取り払い、日本を殺傷兵器をも輸出して国際紛争を激化させ、「死の商人」となる国にするものと言わなければならない。
それは、アメリカ等からのライセンス生産品を、ライセンス元国に提供可能にするとし、その第1弾として、迎撃用地対空誘導弾パトリオットの米国への輸出を決めた。日本では米国の他8カ国から79品目のライセンス生産が行われ、うち21品目が戦闘機やロケット弾など殺傷兵器だとされる。これは、まさに米国などへの殺傷兵器補給拠点に日本がなるということに他ならない。
また、国際共同開発・生産の兵器については、パートナー国が完成品を移転した国へ日本から部品や技術を直接移転することを可能にした。これは日英伊で共同開発する対地攻撃能力を持った次期戦闘機を特に念頭にしている。部品の供与も殺傷兵器を支えるもので、それを世界規模で行うことになる。さらに政府は、来年2月までに、共同開発戦闘機の日本から第3国への輸出も可能にすることをも検討している。
これ以外の武器の部品の移転や修理など役務の提供も、安全保障関係のある国に対しては可能だとしている。
さらに、輸出可能とされてきた5類型の装備については、任務の実施と自己防護に必要な場合は、殺傷能力のある武器を搭載した装備の移転も認めることを明確化した。さらに政府は今後、この類型の見直しと拡大を検討するとしている。
ウクライナだけでなく、侵略や威嚇を受けている国に対する非殺傷兵器の移転も可能だとしている。
まさにこれは、日本が殺傷兵器などを公然と輸出し、他国の人々を殺戮することに加担し、それによって儲ける国になる、重大な一歩と言わなければならない。
このような憲法の理想を投げ捨てた、恥ずべき「死の商人」国家への道を国民は望んではいない。この間の世論調査でも、国民の多数は殺傷兵器の輸出を認めることに反対していることは明らかである(8月10日の時事通信世論調査では、「反対」が60・4%、「賛成」が16・5%)。
私たちは、平和と憲法を守ることを求める広範な市民と共に、この殺傷兵器輸出解禁と「安保3文書」による大軍拡・「戦争国家」づくりの道を阻止するため、引続き全力をあげて奮闘する決意を表明する。