防衛大臣・木原 稔殿
相次ぐオスプレイの緊急着陸に抗議し、全てのオスプレイの飛行中止と撤去を求める
2023年9月28日 日本平和委員会
米海兵隊は9月18日、所属するすべての航空機を2日間、飛行停止にすると発表した。
過去6週間で最も深刻なクラスA事故を3件発生させたことを受けての措置である。この中には8月27日、3人の乗員が死亡した豪州北部でのMV-22墜落事故も含まれている。
この間、米軍・自衛隊の輸送機オスプレイが、相次いで緊急着陸をくり返している。8月31日には、静岡県焼津市の航空自衛隊静浜基地に自衛隊Ⅴ22オスプレイ1機が「予防着陸」し、防衛省は摩耗したギアの部品を交換するため約1か月半を要すると公表した。さらに、9月14日にも、海兵隊普天間基地(沖縄県宜野湾市)所属のMV22オスプレイ計4機が、新石垣空港と鹿児島県奄美市の奄美空港に相次いで緊急着陸する事態が起こっている。加えて16日には、大分空港にMV22オスプレイが緊急着陸した。この機体は、昨年3月29日に沖縄・新石垣空港に緊急着陸したものと同じである。
2012年にMV22オスプレイが普天間基地に配備されて以降、MV22の緊急着陸が15回、墜落が2回、横田基地配備のCV22の緊急着陸が5回、自衛隊のⅤ22の緊急着陸が1回に上っている。まさに異常事態と言わねばならない。
さらに、米軍のオスプレイは、今年8月27日に米海兵隊MV22がオーストラリアで訓練中に墜落して3人の乗務員が死亡し5人が重傷を負ったのをはじめ、この1年半で3回墜落し、12人の命が失われており、6月のカリフォルニアでの墜落事故は、クラッチの不具合=HCE(ハード・クラッチ・エンゲージメント)が原因であることを、米軍調査報告書自身が認めている。そしてその原因はいまだに解明されず、対策も確立していないことを認めている。
わたしたちはこの間、くり返しこのいつ落ちてくるかしれない、そして対策も確立していないオスプレイは、米軍・自衛隊問わずすべて飛行中止し、撤去すべきだと要求してきた。再び起きた一連の異常事態は、その危険性をいっそう明確にするものである。
私たちは、それぞれの緊急着陸の実態と原因を明らかにすることを求めると共に、改めて、ただちにすべてのオスプレイの飛行中止と撤去を求めるものである。
- 木原防衛相は、一連の「緊急着陸」について、「米側に対して、事故の原因に関する情報提供を求めると共に、改めて安全管理を徹底するように申し入れをしております」(9月19日の記者会見)と表明している。その結果を明らかにされたい。
- これだけの頻度で「緊急着陸」をくり返す軍用機は、米軍・自衛隊で他にあるのか? あれば、その機種と「緊急着陸」の回数と原因を明らかにされたい。
- こうした「緊急着陸」のくり返しは、オスプレイの開発当初から指摘されていた「高い振動負荷(飛行中に受ける空気の力 や気流の影響による振動や衝撃)は、非常に可動部の多い複雑な機体構造と、複雑な油圧システムの組 み合せによって、油圧・電気・機械の各システムに問題を発生させ、これらのシステムについて高率の 故障の誘因となっている。これらの故障は安全性に重大な影響を及ぼす」(「米国防分析研究所の元主任 分析官レックス・リボロ氏が 03 年 12 月に作成したオスプレイに関する報告書」より)との構造的欠陥が放置され、対処的措置だけに終始してきた結果ではないのか?
- なかでも、この間、カリフォルニアでのMV22墜落事故についての米海兵隊の調査報告書(7月21日)が事故原因と特定したオスプレイ特有のHCE現象は重大である。その報告書によれば、「HCEの根本原因は依然として不明」である。そして報告書の「勧告」は、「クラッチ不具合の事故を緩和する新しい部品の設計と実用化を製造元企業と連携して取り組む」としている。つまり、いまの部品ではHCEは根絶できないことを認めているのである。にもかかわらず、政府・防衛省は、「使用時間800時間を超えた部品を交換すれば99%安全となる」という米軍側の説明を、その根拠となるデータが示されていないことを認めながら、何の根拠もなくくり返している。あまりに無責任な、国民の命と安全をないがしろにする姿勢と言わなければならない。いつHCEが起き、操縦不能となるかしれないオスプレイをこれ以上飛行させるわけにはゆかない。ただちに飛行を中止させるべきである。
- ましてや、在日米軍のMV22オスプレイの「山岳地帯」での低空飛行訓練の最低高度を、日本の航空法の最低高度(150㍍)以下の60㍍に引き下げることを勝手に決めた日米合同委員会合意は、国民の命への挑戦というべきものである。ただちに撤回すべきである。
- また、10月14日~31日にかけて予定されている日米共同訓練(レゾリュート・ドラゴン)での日出生台演習場(大分)などでの訓練に、米軍のMV22オスプレイ4機程度、CV22オスプレイ2機程度、自衛隊Ⅴ22オスプレイ2機程度を投入した空中機動訓練が計画されていることは極めて危険であり、中止すべきである。この訓練では、陸自オスプレイを初めて沖縄に派遣し、石垣空港を使った負傷者輸送訓練も計画され、沖縄県が飛行自粛を求めているにもかかわらず、これを強行しようとしている。私たちは、この訓練の中止も、断固求めるものである。
- 2012年6月、米フロリダ州における第8特殊作戦飛行隊(空軍)CV-22の墜落事故に関して、防衛省は、「分析評価チーム」を同年8月に訪米させ、3日間、米側報告書に関連する調査を実施し、その結果を「日本側分析評価」として、同年9月11日付で公表している。昨年6月8日、米海兵隊のカリフォルニアでの事故報告書(クラッチ不接合二重事故)に関して、「分析評価チーム」が派遣され、日本側独自の「分析評価」書を公表する予定はあるのか。