2023年9月13日
「土地利用規制法」についての要請
政府は9月11日、「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」にもとづく「土地等利用状況審議会」を開催し、3回目の「特別注視区域」「注視区域」の指定候補として、全国25都道府県の180カ所を示した。今後、地元自治体の意見聴取を行い、年内にも指定をねらっている。
この法律においては、「特別注視区域」「注視区域」内にある土地・建物の所有者や賃借人などの情報を集め、利用状況に関する報告を求めることができるとされ、また、「重要施設」などの「機能を阻害する行為」や「機能を阻害する明らかなおそれ」がある場合、内閣総理大臣が利用中止の勧告・命令を行うことができるとし、命令に応じない場合、罰則を適用することができるとしている。問題は、調査対象が際限なく広がる危険があること、政府の判断で、思想信条や所属団体、家族・友人関係などが調べられる危険があることである。また、「機能を阻害する行為」の内容があいまいであることも重大な問題である。
私たちは、基地の危険な動きへの近隣住民の監視や抗議行動、基地被害除去にとりくむ住民運動の弾圧に使われることを危惧している。岸田政権の大軍拡と「戦争国家」づくりの中で、全国の基地が増強され、核戦争被害も想定した「強靭化」が進められようとし、基地周辺の住民の不安は高まっている。住民の危険と重圧が増加する中、住民は日常的に監視・調査され、弾圧される危険にさらされることになる。このような基地周辺住民にさらなる負担を押し付ける注視区域指定は、到底認められない。また、注視区域等の指定は、地域開発など地方自治にかかわるものであり、不動産業をはじめ各種業者の営業や住民の財産権や生活とも深い関連を持っている。
前回の区域指定に先立つ自治体からの意見聴取においても、「指定の必要性を十分確認できない。指定する具体的な根拠を明らかにすること」「十分な情報を国民、地方公共団体に提供するとともに、パブリック・コメントを行なうこと」「国の責任により早期に住民説明会を開催するなど、制度の周知が確実になされるよう要望する」「市広報誌への掲載やリーフレットの配布などだけでなく、国において住民の説明会などを開催していただきたい」などの意見が出されたものの、政府はまったくこれに応えようとしなかった。(6月30日付内閣府「地方公共団体に対する意見聴取の結果」より)
私たちは、重大な問題点が是正されないまま区域指定が進行することに断固反対する。そのことを改めて表明するとともに、当面下記事項の実現を強く求めるものである。
- 「注視区域」「特別注視区域」の候補となる区域を擁する自治体から、指定の可否も含めて意見、要望を聴取し、決定に反映させること。区域内の住民への説明と意見聴取の場も設けること。
- 原発や民間空港に関する区域指定についての考えを明らかにされたい。
- 「注視区域」「特別注視区域」の指定を行った場合、地方自治体が土地等の利用者に通知するよう措置すること。
- 基本方針に示された「機能を阻害する行為」を明確に限定し、拡大解釈を生まないよう運用すること。また、各区域ごとに具体的にどのような行為が「機能阻害行為」となるかを明示すること。
- 情報収集に際しては、憲法を遵守し、思想・表現の自由など基本的人権を侵害することのないようにすること。個人情報保護の立場から、自治体が個人情報を提供する場合には、当該個人の了承を得る対応を認めること。