防衛大臣:浜田靖一殿
安全の保証なしの自衛隊オスプレイ飛行再開に抗議し、
米軍・自衛隊オスプレイの飛行中止と撤去を求める
2023年8月18日 日本平和委員会
政府・防衛省は、昨年6月8日に起きた米海兵隊輸送機オスプレイ墜落事故の報告書(今年7月21日発表)を受けて、機体と安全対策の点検のため7月22日から地上待機してきた陸上自衛隊のオスプレイ(千葉県・木更津駐屯地配備)の飛行を再開したと8月14日に発表した。
この報告書は、5人の乗員が死亡した同事故の原因が、両方のエンジンでハード・クラッチ・エンゲージメント(HCE=エンジンとプロペラのローターをつなぐクラッチが何らかの原因で離れ、再結合する際に衝撃が発生し、制御不能になる現象)が発生したことによるものと結論付けている。クラッチ事故が引き金になり、エンジンそのものと、緊急時に作動すべきシステムが同時に故障して起きた二重事故である。防衛省は、これを踏まえた点検の結果、安全性は確認できたとなどと説明し、飛行を再開した。
しかし、防衛省が公表した「事故調査報告書及び再発防止策の確認結果」や木更津市の質問への回答を見ても、その危険性が排除されていないことは明らかである。
第1に、防衛省の「確認結果」や「回答」は、「HCEについては過去の約68万飛行時間において発生したのは16件のみ」とくり返し、あたかもHCEがもたらす危険性は小さいかのように表現している。
しかし、そのわずか16件のうち、2022年6月8日には米海兵隊のMV22オスプレイが5人の乗員が死亡する墜落事故を起こし、8月12日にはノルウェーで米空軍のCV22オスプレイが機体回収に1カ月半かかる緊急着陸事故を起こしている。そのため、米空軍は一時CV22オスプレイの全機地上待機を命じ(22年8月16日~9月2日)、原因不明のまま飛行を再開。しかし、その後もHCEの不具合が繰り返し発生したため、米軍はオスプレイの全機種につき、今年2月3日以降、クラッチに関連する部品(IQA)を使用時間が800時間を超えたら交換する措置を取り始めたのである。いったんHCEが起これば、壊滅的な事故につながる危険があることは明らかである。だからこそ、米軍はこれらの措置を連続して取ってきたのではないか。これを大したことのない不具合であるかのように描く防衛省の姿勢は、市民の命と安全をあまりに軽んずるものと言わなければならない。
第2に、防衛省の文書は、「クラッチに関連する部品(IQA)を交換することにより、HCEの発生は99%以上低減可能であり、安全に運航できると米側から説明を受けている」と繰り返している。しかし、8月1日に行った日本平和委員会の防衛省・外務省交渉の中で防衛省側は、その根拠となるデータが米側から提供されていないことを認めた。つまり、HCEの発生は99%以上低減可能という根拠は明らかではなく、米側の説明を伝達しているだけなのである。しかも、「99%以上低減」ということは、完全にはHCE発生の危険が排除されていないということに他ならない。
しかも、事故報告書自身が、今後の課題として「HCE現象の根本的な原因の特定」「HCE現象の発生を緩和するための新たな部品の設計及び製造」などを挙げている。つまり、不具合の原因は特定できておらず、根本的対策も立てられていないのである。そのなかでとりあえず800使用時間を超えた部品を交換する措置をとっているだけで、危険性は除去されていないのである。このような状況でオスプレイを飛行させることは、断じて許されない。我々は改めて、米軍・自衛隊のすべてのオスプレイの飛行中止を、断固求めるものである。
いつ制御不能な状況になるかもしれない、しかもオートローテーション機能のないことが明らかなMV22オスプレイによる「山岳地帯」での訓練の最低高度を、日本の航空法の定める150㍍をはるかに下回る60㍍に勝手に引き下げるなど、言語道断の暴挙である。私たちはその日米合同委員会合意(6月7日)の撤回も断固求めるものである。