【談話】G7広島サミットについて

2023/05/21

声明・談話

 G7広島サミットについての談話

2023年5月22日 日本平和委員会事務局長・千坂 純

一、5月19-21日まで、被爆地広島で開催されていた先進国首脳会議G7サミットが閉幕した。被爆国市民の願いと核兵器禁止・廃絶を求める国際世論を背景に、首脳らは一応は原爆資料館を見学し、被爆者の訴えを聞く場を設けた。そして、議長国日本の岸田首相は、「核兵器のない地球に暮らす理想に向かう」とくり返しアピールした。
 しかし、そのポーズとは裏腹に、G7サミットが発表した「核兵器に関するビジョン」や首脳声明は、被爆者はじめ国内外の市民の願いを完全に裏切るものとなった。「ビジョン」では、人類にとっての緊急・最優先課題である「核兵器のない世界」は「究極の目標」と棚上げされ、逆に、核保有国(米英仏)と核兵器依存国(日独伊加)で構成されるG7首脳らは、自らがしがみつく核兵器は「防衛目的」の抑止力だと正当化した。そこでは、核兵器の非人道性や被爆者、核兵器禁止条約の存在についての言及すらない。
 多数の被爆者の遺骨の眠る広島の地で、史上最大の非人道兵器・核兵器の保有を正当化する宣言を行ったことに、満身の怒りをこめて抗議する。被爆者も、「いちるの望み、希望を完全に打ち砕かれて、今は怒りに震えている。核抑止論に立った議論で戦争をあおるような会議になった」(木戸季市日本原水爆被害者団体協議会事務局長)と、怒りの声を上げている。

 一、岸田首相の姿勢で重大なことは、G7サミットと併せて行われた日米首脳会談で、「核を含むあらゆる種類の米国の能力によって裏付けられた」米国の「拡大抑止」を強化すること、「安保3文書」にもとづく大軍拡路線を推進し、「日米同盟の抑止力、対処力の一層の強化」をすすめることを確認したことである。また、日米韓首脳の意見交換会では、4月の米韓首脳会談で「核協議機関」を設置したことを土台に「日米韓の連携を新たな高みに引き上げることで一致した」。
 これらは、岸田首相が繰り返す「核兵器は使ってはならない」との言葉とは逆に、アメリカの核兵器使用・核脅迫態勢を強化する動きに他ならない。また、それと一体となって日本が敵基地攻撃能力保有の大軍拡をすすめる表明に他ならない。被爆地広島の地で、このようなアジアの緊張と核戦争の危険を高める方向を確認したことは、断じて許されない。
 私たちは岸田首相に対し、このような「拡大抑止」固執の姿勢を改め、核兵器禁止条約への署名・批准、「安保3文書」の撤回と大軍拡の中止を求めるものである。
 
一、G7サミットではウクライナのゼレンスキー大統領も参加し、ロシアによるウクライナへの侵略戦争を厳しく批判し、「我々は、必要とされる限り、ウクライナが求める、財政的、人道的、軍事的及び外交的支援を提供するという我々のコミットメントを新たに」した(首脳声明)。国連憲章を蹂躙するロシアに対する国際的包囲網を広げることは重要である。しかし、G7サミットでの議論は軍事協力の強化が中心となっている。いま最も求められるのは、「包括的かつ永続的な和平を達成するための外交努力への支援を倍加する」(2月の国連総会緊急特別会合)ことである。憲法9条を持つ日本は、自衛隊車両の供与など軍事支援ではなく、和平のための外交努力と非軍事の人道・復興支援に徹するべきである。
 
一、G7首脳宣言は、「インド太平洋」の安全保障の枠組みについて、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)という、中国を排除・包囲するブロック的な枠組みを前面に押し出す一方、米中も含めて地域に関係するすべての国を包摂する「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)に沿った協力を促進するという、矛盾した立場を表明している。ここには、AOIPのような包摂的な平和の枠組みをめざす流れを無視できなくなっている現実がある。私たちは日本政府に対し、日米軍事同盟強化や大軍拡に邁進するのでなく、憲法9条にもとづき、武力の威嚇・行使の禁止、紛争の平和的解決を原則とした、包摂的な平和の枠組みを東アジアに確立するために全力をあげることを、強く求めるものである。

カウンター〈21/06/18-〉

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