日米首脳会談について(声明)
参議院選挙でこの危険極まる改憲・大軍拡路線に厳正な審判を!
2022年5月24日 日本平和委員会
岸田首相とバイデン米大統領は5月23日、首脳会談を行い、共同声明を発表した。これは、この間の日米安全保障協議委員会共同発表(1月7日)や自民党の「新たな国家安全保障戦略などの策定に向けた提言」(4月21日)を踏まえ、憲法を根本から蹂躙する日米軍事同盟強化と大軍拡を推進する方向を、岸田首相がバイデン大統領に誓約したものであり、極めて重大である。
共同声明(以下「声明」)では、岸田首相が「ミサイルの脅威に対抗する能力を含め、国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する決意を表明した」と、いわゆる「敵基地攻撃能力」(自民党提言では「反撃力」)保有の方針化を約束した。これは、憲法を根本から蹂躙し、アメリカと共に他国を先制攻撃・全面攻撃する道へと突き進むことにほかならない。加えて声明では、「岸田総理は、日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意を表明し、バイデン大統領は、これを強く支持した」と、かつてない規模の大軍拡を推し進める方向をも、具体的に約束した。これが自民党提言の、5年以内の軍事費倍増方針を踏まえたものであることは明らかである。消費税3%増税分に当たる5、6兆円もの軍事費の上積みが、疲弊した国民生活をさらに破壊することは必至である。
さらに声明では、「両首脳は、米国の拡大抑止が信頼でき、強靭なものであり続けることを確保することの決定的な重要性を確認した」「拡大抑止に関する日米間の協議を強化する」と、アメリカによる核兵器使用態勢を「強靭化」することを確認した。これが、ロシアの核兵器使用の恫喝に対し、アメリカが核兵器使用の恫喝で対抗することをためらう態度に対する不満を念頭に表明されたものであることは明らかである。このように、アメリカにいざという場合の核兵器使用の保証を強く求めれば、周辺国がいっそう核軍拡に走り、核戦争の危険が高まることは明らかである。このような危険な方向を求めながら、首脳会談で岸田首相が、G7サミット会場を広島とすることを提案し、「核なき世界」をめざすかのようなポーズをとっているのは、極めて欺瞞的と言わなければならない。被爆国日本政府がやるべきは、核兵器禁止条約にただちに参加し、アジア太平洋地域を核と核の対立の地域から、非核の地域へと転換する先頭に立つことである。
さらに声明では、民意を無視した沖縄・辺野古新基地建設や鹿児島・馬毛島基地建設をごり押しすることも再確認している。
こうした米軍事戦略と一体化し、核対核、軍事対軍事の対抗に突き進む道は、この地域の緊張と戦争の危険を高める極めて危険な方向である。首脳会談後の記者会見でバイデン大統領が台湾問題への軍事関与を表明したことも、重大である。それは、1月の日米安全保障協議委員会共同発表で「台湾有事」の際の自衛隊の参戦を確認しているだけに、沖縄はじめ日本全土を戦火に巻き込む危険をもたらすものである。
私たちは、憲法を根本から破壊し、日本をアメリカの戦争に巻き込む、この日米共同声明の危険な方向に、断固として反対する。いま、私たちに求められているのは、憲法9条にもとづく外交の力で、世界とアジアの平和を実現する共同の輪を、大きく広げることである。その共同を広げ、目前に迫った参議院選挙で、この危険極まりない平和と憲法を破壊する岸田自公政権に厳しい審判を下すため、全力を挙げる決意を表明するものである。