日米安全保障協議委員会共同発表について
2022年1月8日 日本平和委員会
1月7日、日米の外交・軍事閣僚による日米安全保障協議委員会が開かれ、共同発表が発出された。
この会合は、今まさに沖縄、岩国をはじめ全国各地の米軍基地から新型コロナウイルス感染が急拡大する中で行われた。にもかかわらず、共同発表にはその真摯な反省も、米軍関係者の入国・外出禁止や日米地位協定改定を検討する姿勢もなく、「二国間の連携の重要性を再確認した」とあるだけである。ここには、米軍を優先し、日本国民の命と安全をないがしろにする対米従属の日米安保体制の本質が示されている。
共同発表の冒頭総論に、日米両国は「国力のあらゆる手段、領域、あらゆる事態を横断して、未だかつてなく統合された形で対応するため、戦略を完全に整合させ」「同盟を絶えず現代化し、共同の能力を強化する決意を表明した」とあるのは、核心であり、重大である。共同発表は、アメリカのインド・太平洋での軍事的覇権を維持する戦略に日米軍事同盟を全面的に動員し、自衛隊の危険な役割を拡大し、大増強を推し進める方向を確認している。共同発表では、「今後作成されるそれぞれの安全保障戦略に関する主要な文書を通じて、同盟としてのビジョンや優先事項の整合性を確保する」など、アメリカの戦略に日本を全面的に組み込む方向を明記している。
この中で、中国の様々な覇権主義的な行動などへの「懸念を表明」し、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」するとともに、「行動を抑止し、必要であれば対処するために協力する」としていることは、重大である。これは、軍事的威嚇で「抑止」するだけでなく、必要な時は軍事力を行使する立場を公然と表明したものである。中国の覇権主義的行動は、厳しく批判されなければならない。しかしそれは、国際法と道理に基づく批判の包囲網によるべきであり、このような軍事的威嚇を強める立場をとれば、軍拡競争と戦争の危険を高め、解決を困難にするばかりである。
しかも、「米国は、核を含むあらゆる種類の能力を用い」「米国の拡大抑止が信頼でき、強靱なものであり続けることを確保する」と、アメリカの核兵器使用政策の重要性を、これまでにないほど強調している。これは、核兵器禁止条約に真っ向から背を向け、この地域の核軍備競争をいっそう激化させるものと言わなければならない。唯一の戦争被爆国として断じて許すことはできない。
これと一体のものとして、日本政府は、「防衛力を抜本的に強化する決意を改めて表明した」。しかも、「ミサイルの脅威に対抗するための能力を含め、国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する決意を表明した」と、事実上、「敵基地攻撃」軍拡路線を進めることを、米国に約束したものである。加えて、その方向で緊急事態に関する日米共同作戦計画が「進展」していることを明らかにしている。これは、憲法の平和原則を根本から踏みにじり、米軍とともに自衛隊が他国を攻撃する態勢に踏み込もうとするものであり、断じて許すことができない。
さらに共同発表は、▶増強の続く南西諸島の自衛隊施設をはじめ、全国の基地の日米共同使用化を推進すること。▶陸海空、ミサイル防衛、宇宙、サイバー、電磁波領域などあらゆる領域を統合して日米の相互運用性を高め、実践的な訓練、演習を推進すること。▶オーストラリア軍との一体化をはじめ、インド・太平洋でのNATO諸国軍などとの多国間演習を拡大すること。▶AIや極超音速兵器など戦争の危険を高める軍事技術の共同開発・生産の推進、秘密保全体制の強化など、あらゆる分野で軍事態勢を強化する方向を打ち出している。
さらに、「同盟強靭化」の名のもとに、在日米軍への「思いやり予算」を増額する特別協定を改定し、住民の総意を無視した沖縄・辺野古、鹿児島・馬毛島の新基地建設を強行する立場を鮮明にしている。
この道は、アメリカの軍事戦略に全面的に組み込まれて、平和憲法を根底から破壊し、沖縄はじめ日本列島全体を軍事要塞化し、核戦争も含む破滅的な戦争へと日本を導く、亡国の道である。また、軍事費をかつてなく激増させ、国民生活を破滅に導く道である。
私たちは、この危険な道を食い止め、憲法にもとづく平和外交を進め、非核平和のアジア太平洋を切り開く日本を実現するため、奮闘する決意を表明するものである。