防衛大臣・岸信夫殿
外務大臣・林芳正殿
昨年12月20日に私たちは、在沖米軍基地での新型コロナウイルス感染拡大の事態を受けて、「米軍関係者の入国制限を行い、オミクロン株検査をはじめ日本の検疫を義務付けるよう、日米地位協定の抜本改定を要求する」との要請を行った。2022年年頭の深刻な事態は、この要求がいっそう切実なものになっていることを示している。
沖縄県では、在沖米軍基地9施設で昨年12月15日から1月3日までに、新型コロナウイルスの感染者がキャンプ・ハンセンでの512人をはじめ832人確認されている(沖縄県発表)。一方で、沖縄県民の新規感染者数も爆発的に増加している(3日に130人で1週間前の26倍増、年明け3日間の合計は233人)。オミクロン株感染者も計88人となっている。外務省によればキャンプ・ハンセンで発生したクラスターをめぐり、PCR検査を行った検体の47%がオミクロン株と認定された(12月29日。検体数は不明)。
この感染拡大について玉城デニー知事は、「在沖米軍基地につきましては、昨年12月初旬、部隊移動により米本国から渡航前PCR検査を受けずに沖縄の米軍基地に来た部隊から感染が広がり」「基地関係者を中心に確認されていたオミクロン株が市中感染でも確認されており、デルタ株をしのぐ勢いで急速に置き換わりが進んでいる」と指摘している(1月2日)。
米軍岩国基地(山口県岩国市)でも12月29日に基地関係者80人が感染(30日には27人)。1月3日には山口県で感染した56人中44人が岩国市在住者で、山口県の村岡知事は「米軍関係者の影響の可能性が高い」と述べている(1月4日付、東京新聞)。米軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)でも、12月30日、新たに米軍関係者75人の感染が確認され、うち69人は国外から日本に最近到着した者だった(共にオミクロン株感染状況は不明)。
まさに、在日米軍基地が入国制限と検疫の抜け道となり、市中感染が広がっている可能性が濃厚な事態が各地で生まれているのである。しかも、在日米軍が出入国時の米軍関係者にPCR検査を免除していたことも明らかになり、慌てて政府が要請し、12月30日以降、到着24時間以内の検査実施を行うという事態が生まれた。これは、「在日米軍は、日本政府の水際対策に整合的で厳格な措置をとっている」というこれまでの政府の説明が、何の根拠もなく、日米地位協定の下で、米軍任せになっていたことを浮き彫りにするものである。米軍が沖縄県の要請した日本の機器でのゲノム解析を拒否し、感染者の所属基地の内訳、陽性者や濃厚接触者の療養状況についての情報提供に非協力的であること。沖縄県などが基地外への外出禁止を求めている最中にキャンプ・ハンセン所属の米兵が酒気帯び運転で逮捕されるなど、マスクを着けぬ米兵が外出を繰り返している事態にも、厳しい批判が向けられている。
この根底には、「米軍に特権的な地位を与え、十分な感染予防対策に関する情報の共有もままならない等の状況を作り出している、日米地位協定がもたらす構造的な問題」(玉城知事)がある。私たちは改めて、日本政府に対し、米軍基地内での感染防止措置が厳格に実施されているかどうか自ら検証し、米軍関係者にも入国制限措置を厳格に適用し、米兵の外出や、日米共同訓練への参加をはじめ米軍の国内移動を禁止すべきこと。基地従業員の感染防止や、従業員家族のPCR検査の実施などを徹底的に行うこと。そして、根本的には、米軍関係者の出入国を管理し、検疫ができるよう、日米地位協定を抜本的に改定することを求めるものである。