≪声明≫
外務大臣・茂木敏充殿
防衛大臣・岸 信夫殿
米軍機による低空飛行訓練の異常な激化に抗議する
政府は低空飛行の中止を毅然として要求し、航空特例法の撤廃と日米地位協定の抜本改定を行え
2021年2月25日 日本平和委員会
全国で米軍機による傍若無人の無法な低空飛行訓練が激化し、全国の自治体・住民から中止を求める声が噴出している。
沖縄では、昨年末以降、県や県議会も再三にわたり中止を求めているにもかかわらず、異常な超低空飛行が各地で繰り返されている。昨年12月28日、29日と今年1月6日慶良間諸島の座喜味村や渡嘉敷村周辺で、米空軍嘉手納基地に配備されているMC130J特殊作戦機による低空飛行が相次いで目撃され、海抜44mにある展望台のほぼ横を飛行する動画も撮影された。これに対し、県議会米軍基地関係特別委員会が全会一致で抗議声明を可決し、県も日米政府、米軍当局に中止を要請した。ところが、米軍はその直後に辺戸岬や金武町沖でMC130Jの低空飛行を行い、県議会は2月16日の本会議で「米軍機による低空飛行の即時中止」を求める決議を全会一致で採択。県も17日に日本政府に抗議した。それに対してもMC130Jによるとみられる低空飛行が慶良間諸島や辺戸岬で確認され、高度30m以下の可能性も指摘されるなど、無法極まる飛行が繰り返されている。
東京では、毎日新聞が昨年7月から今年1月までの長期にわたる調査を行い、在日米軍ヘリが人口密集地の新宿駅周辺の上空で高度300m以下の飛行をくり返していることが、衝撃的記録映像で明らかにされた。新宿駅の真上を通過したのは8回で高さ約170mの商業ビルの上をかすめるような様子も確認されている。元海将の伊藤俊幸氏は「この低空飛行は市街戦を想定した訓練の可能性もある」と指摘している。
鹿児島県でも、昨年4~12月に奄美市で60件(19年度は39件)と低空飛行目撃情報が急増し、県全体でも12月末時点で89件と過去最多を更新している。
愛媛県でも今年度の目撃情報は250件を超え、すでに過去最多となり、県知事は「万一墜落した場合には、県民を巻き込む大惨事につながりかねない」と飛行中止を求めている。
かねてより米軍機の低空飛行被害を受けてきた島根県浜田市では、旭町に防衛省がおく測定器で昨年10月、「騒々しい街頭」に相当する70デシベル以上が185回に上り、2014年度以来の深刻な水準に近づき、学校の授業の中断、保育園児が怖がり泣き出すなど、深刻な被害が生まれている。
このような事態が全国各地で生じていることは、主権国家として一刻も放置できない事態である。これを放置すれば、平穏な市民生活が破壊され、多大な人命が犠牲になりかねない。しかも、これらの事態は、映像にも克明に記録されている動かしがたい事実である。
ここに記録されている事態は、「在日米軍による低空飛行訓練について」の日米合同委員会合意で、「人口密集地域や公共の安全にかかわる他の建造物(学校、病院等)に妥当な考慮を払う」「在日米軍は、国際民間航空機関(ICAO)や日本の航空法に規定される最低高度基準を用いており、低空飛行訓練を実施する際、同一の米軍飛行高度規制を現在適用している」としていることにも反することは明白である。
かかる認識を踏まえ、次のことを要求する。
��, 一連の特に沖縄や東京(毎日新聞)の映像に記録されている米軍機の飛行が、航空法の最低高度基準以下の無法な飛行であることは、誰が見ても明らかである。まず、そのことを認め、こうした飛行を直ちに全面的に中止するよう、断固として米政府に要求すべきである。そして、今後違反した場合は、米軍機の全面的な飛行中止など、断固たる措置を取るようにすべきである。
��, これだけの事態が明らかになったのであるから、政府として、米軍機の低空飛行の実態を全国的に徹底的に調査し、その結果を公表し、再発防止のための具体的な措置を明らかにすべきである。
��, 政府は「米側に合意の順守を何度も求めている」と繰り返している。ところが、事態は一向に改善されないどころか、深刻化している。この根源には、政府が日米地位協定のもと、在日米軍には基本的に日本の国内法は適用されないとの立場を取り、さらに、航空特例法によって日本の航空法の定める最低高度基準など安全確保義務を米軍に対し全面的に免除している問題がある。航空特例法を撤廃し、日米地位協定を抜本的に改定して、米軍に国内法を遵守することを義務付けるようにすべきである。この要求は、低空飛行被害に苦しむすべての自治体、そして全国知事会も一致して求めている当然の要求となっている。
私たちは、断固として以上のことを求めるものである。