≪声明≫
イージス・アショア代替策と「敵基地攻撃能力」軍拡推進の閣議決定の撤回を求める
2020年12月21日 日本平和委員会
一、菅政権は12月18日の閣議で、配備を断念した陸上配備迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替として「イージス・アショア搭載艦」2隻の導入を行うこと、また、「抑止力の強化について、引き続き政府において検討を行」い、国産の長距離ミサイルの開発を行うことを決めた。
これは、「専守防衛」の原則を踏み破る憲法違反の大軍拡に道を開き、アジアの緊張を激化させ、戦争の危険を高める決定であり、撤回することを求めるものである。
一、「イージス・アショア搭載艦」2隻の導入は、アメリカと購入契約を交わしてしまったSPYレーダー2基の契約破棄を行わないまま、これを大型の艦体に搭乗させようというものである。政府の見積もりでも、2隻で5000億円ほどと見込まれ、「イージス・アショア」2基4000億円をはるかに上回るものになる。しかも、これには発射実験費用やミサイル購入費用等が含まれておらず、天井知らずに費用が膨張する危険がある。まさに、自らの失政の付けをさらに上乗せして国民に押し付けようという愚挙である。このような税金の無駄遣いはただちに止め、コロナ対策と国民生活支援に振り向けるべきである。
一、今回の閣議決定では、安倍前首相から託された「敵基地攻撃能力保有」軍拡推進の新安保方針については、先送りされた。これは新型コロナウイルス感染被害に対する無為無策などへの批判で内閣支持率が急落するなか、世論のさらなる批判を恐れての対応である。しかし、この内閣が「専守防衛」を捨て去る「敵基地攻撃能力保有」軍拡をおしすすめようとしていることは、同時に決定された国産の長距離ミサイル開発方針にはっきりと示されている。これは、現有の12式地対艦誘導弾(射程約200㎞)の射程を1000km程度にまで伸ばし、陸だけでなく軍艦や戦闘機からも発射できる体制をつくろうというものであり、まさに、敵地攻撃の攻撃的兵器以外の何物でもない。さらに、来年度予算案でもステルス戦闘機、長距離ミサイル、電子戦機の導入、護衛艦の空母への改修、電子戦部隊の全国配備など、敵基地攻撃能力保有につながる軍拡メニューがずらりと計上され、史上最大の軍拡予算となっている。世論を恐れて憲法蹂躙の新方針の策定は先送りしながら、それを実行するための攻撃的兵器の導入はどんどん進める――このような姑息なやり方は断じて認められない。
一、菅政権は、こうした既成事実をつくりながら、やがて機を見て「敵基地攻撃能力保有」方針を公表し、これを国家安全保障戦略や防衛計画の大綱、日米防衛協力の指針の改定に反映し、先制攻撃を想定した日米共同作戦作りや訓練を公然と本格的に推進できるようにしようとしていることは明らかである。私たちは、憲法はもとより、「専守防衛」の原則も蹂躙し、国際法違反の先制攻撃を日米共同で行う道に突き進もうとする、かかる策略を決して許すわけにはいかない。私たちは、今回の閣議決定の撤回を求め、戦争法廃止と「敵基地攻撃能力保有」軍拡方針策定のたくらみの撤回を求めるものである。そして、軍事費を大幅に削減し、国民生活とコロナ対策に振り向けることを、強く要求するものである。