《声明》
防衛大人権侵害裁判での国の上告断念を歓迎し、防衛大での人権侵害の根絶を要求する
2020年12月24日 日本平和委員会
一、幹部自衛官を養成する防衛大学校で上級生からいじめや暴行を受けた元防大生が、国と教官の安全配慮義務違反を問うて国家賠償を求めた裁判で、国の責任を認め約268万円の損害賠償を命じた12月9日の福岡高裁判決に対し、防衛省は最高裁への上告断念を表明した。これは、防衛大の人権侵害の是正を求めて闘い続けてきた、原告とその家族、弁護団、福岡を中心にした支援者の、粘り強い運動が生んだ画期的な成果である。日本平和委員会もこの問題を重視し、国会行動や各地での報告集会、機関紙誌などでの啓発、平和大会での訴えなどに取り組んできた。私たちは、国・防衛大がこの確定判決を踏まえ、防衛大での人権侵害を根絶する措置をただちにとることを求めるものである。
一、判決は、「防衛大の学生間指導において、上級生の下級生に対する暴力や不当な精神的苦痛を与える行為がしばしば行われていた」事実を認定。「防衛大は、学生間指導の実態を具体的に把握する必要があるとの意識を欠いており、その実態の把握のための調査などの措置を講じていなかった。また、学生間指導における暴力や不当な精神的苦痛を与える行為を防止するために、どのように学生を指導すべきかに関する防衛大内部での検討も不十分であ」り、加害行為に適切な指導をしてこなかったことを指摘。防衛大側の「安全配慮義務違反の責任」を断罪している。これは、裁判の中で原告と弁護団が厳しく追及してきた防衛大の学生間指導に蔓延する深刻な人権侵害の実態と、それを放置してきた防衛大の責任を認定し、是正を求めたものであり、極めて重要な意義を持つものである。
一、人権侵害によって心身に深い傷を負った原告本人の何よりの願いは、二度とこのような被害が生まれないようにすることである。しかし、現実には、提訴後も防衛大や自衛隊でのパワハラ、セクハラの事件が多発している。このような事態は一刻も放置しておくわけにはいかない。国・防衛大は人権侵害を根絶する具体的措置をただちにとるべきである。横浜地裁で行われているもう一つの元防大生の防衛大人権侵害裁判についても、この判決を踏まえて国の責任を認め、賠償に応じるべきである。
一、私たちは、この裁判を通じて明らかになった異常で深刻な人権侵害の実態は、現在政府が進めている、日米軍事同盟強化=アメリカと共に海外で戦争する自衛隊づくりの政策と深く結びついて進行しているのではないか、いかなる理不尽な命令にも絶対服従し、いつでも戦場に出向き血を流すことを拒まない隊員を育成することと結びついているのではないかとの懸念をいだいている。私たちは、ここに改めて、「敵基地攻撃能力保有」軍拡はじめ、自衛隊員を戦場に駆り立てるような「戦争する国づくり」、日米軍事同盟強化に反対する闘いに全力を挙げる決意を表明するものである。