《声明》
米国トランプ政権のシリア攻撃に抗議する
2017年4月8日 日本平和委員会
一、トランプ米大統領は、6日(日本時間7日午前)、米軍に命じシリア空軍基地に巡航ミサイル59発を発射した。この攻撃によって、シリア軍兵士と民間人十数人が死亡したとの報道もある。同大統領はこれについて声明で、「化学兵器の拡散と攻撃を防ぐため、シリア軍の飛行場と軍事施設を標的にした」「(化学兵器拡散防止という)米国の国家安全保障上の極めて重要な利益となる」と正当化している。
化学兵器使用は、誰によるものであれ、人道と国際法に反する重大で許されない残虐行為である。それに対しては、真相を徹底的に究明し、国際法にもとづき国際社会が一致してその根絶のための措置をとることが求められている。現に米英仏が国連安保理に5日に提示していた決議案では、シリアでの化学兵器使用について国際的な真相究明を求めていた。
ところがトランプ大統領は、一方的にシリア政権の行為と決めつけ、国連決議もないまま、一方的に武力攻撃を行ったのである。これは、国連憲章と国際法に反する無法な武力攻撃である。もしこれが許されれば、米国が「国家安全保障上の利益」と判断すれば、いつでもどこでも勝手に武力攻撃することができる無法世界になってしまう。断じて許されない。そしてこのような攻撃は、シリアの内戦状態をいっそう悪化させるだけである。
一、重大なことは、安倍首相が「化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないとの米国政府の決意を日本政府は支持いたします」と、無条件にこの武力行使を支持したことである。一方で菅官房長官は、「(化学兵器使用の)事実関係については国連機関で現在、調査している」と述べている。支離滅裂である。ここには、国連憲章と国際法、事実と道理にもとづき平和的解決をめざす自主的立場のかけらもない対米追随姿勢が示されている。
しかも注視しなければならないのは、安倍首相が「東アジアでも大量破壊兵器の脅威は深刻さを増しています。その中で、国際秩序の維持と同盟国と世界の平和と安全に対する米大統領の強いコミットメントを日本は高く評価します」と、北朝鮮を念頭に今回のような対応を求める姿勢を示していることである。トランプ政権は現在、先制攻撃も含む軍事的選択肢も含め対北朝鮮政策を検討している。このようなことを実行すれば、この地域は核戦争も含む悲惨な戦争へと突き進むことになる。その方向を求めるような安倍首相の発言は、極めて危険だと言わなければならない。そのような軍事的緊張を高める道ではなく、いま国連で交渉されている核兵器全面禁止条約を実現し、非核平和の北東アジアを実現するためにこそ全力をあげるべきである。そのことを、この際改めて強く求めるものである。