≪声明≫
日本政府は、米政府の北朝鮮への先制攻撃を容認する態度を改め、問題の平和的解決のために全力をあげよ
2017年4月19日
日本平和委員会
一、北朝鮮の核・ミサイル開発に対し、米トランプ政権が先制攻撃を含む軍事的選択肢もありうるとして軍事的威嚇を強めていることが、軍事的緊張を著しく高めている。
米政府は、「シリアとアフガニスタンで選んだ行動によって世界はトランプ大統領の力と決意を見た」(4月17日、ペンス副大統領)として、米国が4月6日にシリアに対して行った国際法の根拠を示さない一方的軍事行動や、13日にアフガニスタンで過激派組織IS掃討を口実に投下された大規模爆風爆弾(MOAB)を例に挙げ、北朝鮮の対応いかんでは、こうした一方的で大規模な先制攻撃もありうると威嚇している。
これに対し、北朝鮮側も16日にミサイル発射を行い、「(米国が北朝鮮に)少しでも手をかけるなら全面戦争になりかねない。朝鮮半島で戦争が起きれば、日本に一番被害が及ぶ」(宋〈ソン〉朝日国交正常化交渉担当大使)などと、挑発的な言動をくりかえしている。
米国がいったん先制攻撃を行えば、それは米国カーター前国防長官が「その戦争は、朝鮮戦争以来、見たこともない極めて破壊的なものとなるだろう」(米ABCテレビ)と述べているように、破滅的な惨禍をもたらす危険がある。
私たちは、北朝鮮が核・ミサイル開発を中止すること、一切の挑発的行動を止めることを求める。同時に、米トランプ政権に対し、先制攻撃を行わないこと、軍事的緊張を高める行動を中止することを求めるものである。そして、双方が問題の平和的解決のために努力することを求めるものである。
一、重大なことは、安倍政権が、こうしたトランプ米政権の先制攻撃を選択肢とする軍事行動を全面的に支持し、これに加担する立場で行動していることである。安倍首相はトランプ政権のシリア攻撃への支持を表明した上で、「東アジアでも大量破壊兵器の脅威は深刻さを増しています」と強調し、「国際秩序の維持と同盟国と世界の平和に対するトランプ大統領の力強いコミットメントを日本は高く評価します」と表明(7日)。シリアでの一方的軍事行動を、場合によっては北朝鮮に対して行うことを容認する立場を表明している。そして、ペンス副大統領との会談でも「(北朝鮮に対し)『すべての選択肢がテーブルの上にある』との考え方で対処しようとしていることを評価する」と全面的に支持している(17日)。
さらに重大なことは、安倍政権が米軍の軍事的威嚇行動に事実上加担する行動をとっていることである。在日米軍基地では、岩国基地に配備されたF35Bステルス戦闘機が精密誘導爆弾搭載の訓練を行い、嘉手納基地では20機のF15戦闘機が実弾を搭載し一斉に出撃する訓練を行い、北朝鮮への攻撃態勢を誇示している。訪日したペンス副大統領が横須賀の原子力空母ロナルド・レーガンを視察し隊員を激励したことも、軍事的威嚇の一環である。
さらに、自衛隊がこの軍事威嚇の行動に事実上加わっていることが重大である。米韓合同演習の中で米軍B1戦略核爆撃機がグアムから韓国へ展開する途上で、航空自衛隊F15戦闘機などと共同訓練を行っている。また、朝鮮半島近海に向かうカールビンソン空母打撃群と海上自衛隊が共同訓練を行うことも計画されている。これらは事実上、北朝鮮への米軍の軍事威嚇行動への自衛隊の加担だと言わなければならない。このような米国の軍事威嚇への加担は、武力による威嚇と行使を禁じた憲法第9条に反するものであり、即刻中止すべきである。しかも、こうした米軍と一体の自衛隊の行動は、憲法違反の安保法制(戦争法)の下で、米軍の戦争にまきこまれ、「参戦」する道にエスカレートする危険(米軍武器防護での武器使用、「重要影響事態」下での戦闘地域の後方支援、「存立危機事態」とみなしての集団的自衛権の行使=全面的参戦)もはらんでいるだけに重大であり、重ねてその中止を求めるものである。
一、いま求められているのは、北朝鮮の核・ミサイル開発問題の平和的解決のために全力をあげることである。私たちは、安倍政権に対し、次のことを求めるものである。
① トランプ政権の国際法違反の先制攻撃を容認する態度を改め、先制攻撃を行わないよう、同政権に求めること。
② 在日米軍による北朝鮮に対する軍事威嚇行動の中止を求め、自衛隊の米軍軍事行動への加担を中止すること。
③ 北朝鮮及びアメリカなど関係各国に対し、問題の平和的解決のために、「6カ国協議」の再開など話し合いを行うことを求めること。2005年「6カ国協議」合意にみられるように、相互に核配備を行わず、武力の威嚇や行使を禁止し、関係を正常化し、北東アジアの平和の枠組みをつくる方向での解決をめざすこと。
④ 唯一の被爆国の政府として、現在、国連で行われている核兵器全面禁止条約交渉会議に参加し、核兵器全面禁止条約を締結し、それへの北朝鮮や米国などの参加を求め、根本的に核の脅威を廃絶するために努力すること。