南スーダンへの自衛隊派兵決定の撤回を!
日本は憲法の平和原則に則った民生支援を
��011年11月2日
日本平和委員会
野田政権は1日、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に陸上自衛隊の施設部隊を派兵することを決め、一川保夫防衛相が自衛隊に派遣準備を指示した。政府は陸自部隊 200~300 人を南部の首都ジュバ周辺に来年1月から派遣し、道路や橋などのインフラ整備に当たるという。
20 年以上の内戦を経て今年 7 月にスーダンから分離・独立した南スーダンでは、日本の1.6 倍を超える国土面積に舗装道路は約 60 キロしかないという。インフラ整備は新しい国づくりの基本であり、国際社会の支援を必要としているのは間違いない。しかし、自衛隊が活動を予定している首都ジュバ周辺の治安はおおむね安定しており、現に民間建設会社による道路建設が行われている。日本の国際協力機構(JICA)や NGO も現地でさまざまな支援活動を実施しており、武装した自衛隊を派兵し、専門ではない道路建設をやらせる必要性はまったくない。
今回の派兵決定の背景には、米国との「約束」が背景にある。6 月 21 日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同文書は「平和維持活動における日米協力を強化する」とうたっているが、派兵決定はこの「約束」を忠実に実行し、TPP 交渉参加表明などとともに今月中旬の日米首脳会談に向けて対米協力をアピールしようとするものである。こうした「派兵先にありき」「日米同盟深化のための派兵」は絶対に認められない。
同国北部のスーダンとの国境沿いの地域では、反政府民兵組織が活動しており、10 月 28日にも政府軍との大規模な武力衝突が起こっている。こうした地域において、国連南スーダン PKO の根拠となっている国連安保理決議 1996 は、民間人保護のために「必要なあらゆる手段を用いることを許可する」と武力介入の強い権限を与えており、国連PKO の「中立性」が揺らぐ可能性がある。自衛隊の派兵は PKO 参加 5 原則に抵触するばかりか、自衛隊が反政府民兵組織などの攻撃対象になる危険性も否定できない。PKO 参加 5 原則を満たしているかどうかも含めて、臨時国会で議論を尽くすべきだ。また、この派兵に際して政府与党内には他国の部隊を防衛するために武器使用基準を緩和すべきだとの声もあるが、危険な
戦闘参加に道を開くものであり、我々は断固これに反対する。
南スーダンの新しい国づくりに最も必要なのは、民生支援だ。道路建設を効果的に行うのであれば、コストのかかる自衛隊ではなく、ODA などで資材や重機などを提供し、現地の人々を雇用しながら、民間から専門の技術者を派遣して技術指導しながら工事を進めるべきではないか。ほかにも、農業技術支援や職業訓練など、やれることはたくさんある。
アフリカの多くの紛争や内戦の背景には、欧米諸国による植民地支配や資源などの収奪の歴史がある。その点では、これまで一度もアフリカを侵略したり植民地支配したことのない日本は、現地の人々からの信頼が厚いという。日本はこうした「財産」を生かし、憲法の平和原則にのっとり現地のニーズに基づいた民生支援こそ行うべきである。憲法違反の自衛隊海外派兵は、どんな形でも行なってはならない。
我々は、政府に対し、南スーダンへの自衛隊派兵決定の撤回を強く求めるものである。