〈声明〉米軍・裁判権放棄密約関係文書の公開に際して――密約破棄を!

2011/09/05

声明・談話

〈声明〉行政協定(現日米地位協定)第17条にかかわる米軍関係者への第1次裁判権放棄秘密文書の外務省による公開についての声明
――日本政府は「密約」を認め、ただちに破棄し、米兵を日本の法にもとづいて厳正に裁くよう日米地位協定を抜本的に改定せよ――


2011年8月26日 日本平和委員会

 外務省は本日、私たち日本平和委員会が、国際問題研究者・新原昭治氏らとともに一貫して公表・破棄を政府に求めてきた、日米地位協定にかかわる米兵・米軍軍属の第1次裁判権放棄密約(日米合同委員会の非公開議事録)を公開した。
 これは、1953年10月28日の日米合同委員会裁判権分科委員会刑事部会の非公開議事録で、当時の津田實同部会部会長(法務省刑事局総務課長)が、「(行政協定の改定によって「公務外」の米軍関係者の事件・事故に関する第1次裁判権は日本政府が持つことになったが)日本にとって著しく重要と考えられる事件以外については第1次裁判権を行使するつもりがない」と約束したものである。
 我々は、この密約原文を新原氏が米国立公文書館で発見したことを受け、新原氏や米兵犯罪被害者とともに、2008年10月23日、国会内で記者会見を行い、その公表と破棄を求めた。その後、我々はこの密約を告発するパンフレットを発行し、全国の地方議会で密約の公表・破棄を求める決議を広げ、再三にわたって外務省交渉行ってきた。これに対し、自民党政府時代は密約の存在を全否定してきたが、民主党政権に代わる中で、外務省は「核密約関係の調査が一段落した時点でしかるべく対応する」と言明するように変化した。今回、民主党政権が非公開議事録を公開したのは、新原氏とともにおこなってきた我々のこうした追及の一つの成果だと確信する。

 しかし、外務省は公開の直前に日米合同委員会を開催し、非公開議事録に記録された津田氏のこの発言は、「一方的な政策的発言」に過ぎず、「日米両政府間の合意」ではないと米側代表に述べさせ、これを受けて日本政府代表が、米軍関係者への起訴は「日本国の法に従って行われる」と述べる、茶番劇を演じている。つまり、このやり取りを通じて、この非公開議事録は正式な日米間の密約ではないし、この密約にもとづいて米軍関係者が不当に不起訴になるような事態は存在しないと開き直ろうとしているのである。
 しかし、この密約前文とともに新原氏が公開した米政府解禁文書に記録された交渉の記録は、米政府が日本の裁判権行使が最小限になるようにすることを執拗に求め、その意を汲んでこの非公開議事録が作成されたことを、鮮明に示している。だからこそ交渉がまとまった時点で、当時のアリソン駐日米大使は岡崎外相に、「私は日本政府が裁判権放棄に同意したことに自分としても満足している」と明言したのである。そして、この密約がいまも米軍関係者の引き起こす事件・事故への日本の司法当局の異常に甘い対応を生み出していることは、日本平和委員会「平和新聞」編集部が入手した法務省統計資料によっても裏付けられている。情報公開法に基づき入手した「平成22年分 合衆国軍隊構成員等犯罪事件人員調」によれば、2010年に起こった米兵・軍属・家族による犯罪の、自動車による過失致死傷を除いた一般刑法犯の起訴率は11.7%であり、日本全体における起訴率42.2%に比べて極めて低い。
これらの事実は、これがまぎれもない日米政府間の密約であり、いまも米兵犯罪への異常に低い不起訴状況を生み出していることを示している。これは密約ではなく、米軍関係者も日本の法によって厳正に裁かれているなどとごまかすことは絶対に許されない。
 我々は日本政府に対し、これを密約と認め、ただちに破棄し、「公務外」であろうと「公務中」であろうと米軍関係者を日本の法にもとづいて厳正に裁くこと、その方向で日米地位協定を抜本的に改定することを求めるものである。

カウンター〈21/06/18-〉

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