【談話】 アフガニスタンの民間人退避輸送のための自衛隊派遣問題について

2021/08/25

声明・談話

【事務局長談話】

アフガニスタンの民間人退避輸送のための自衛隊派遣問題について

――戦闘に巻き込まれる重大な危険。政府はただちに国会を開き、徹底審議せよ――


2021年8月26日 日本平和委員会事務局長・千坂 純


一、政府は、8月23日、武装勢力タリバンが実権を掌握したアフガニスタンに残る邦人や大使館などの現地アフガニスタン人スタッフらを退避させるため、現地では陸上自衛隊中央即応連隊長を指揮官とする空輸隊、誘導輸送隊等からなる「邦人等輸送派遣統合任務部隊」を編成することを決定。23日にC2輸送機1機を、24日にC130輸送機2機を、入間基地(埼玉県狭山市)からカブール空港へ出発させた。25日には、B777政府専用機1機も追加派遣した。

 現地日本大使館はすでに閉鎖され、日本人職員12人は17日に英軍機でアラブ首長国連邦のドバイに退避している。主な輸送対象は、大使館や国際協力機構の現地スタッフとその家族になるとみられる。自衛隊法84条の4の「生命・身体の保護を要する外国人」も輸送できるとする規定に基づく、初の外国人の輸送活動となる。


一、いま、アフガニスタンの邦人や現地スタッフらの安全が危険にさらされている背景には、アメリカによるアフガニスタンへの無法な報復戦争、それを支持・加担してきた日本政府の政策の破綻がある。20年前の9・11同時多発テロに対する報復戦争の名で行われた米政府によるアフガニスタン・タリバン政権への一方的攻撃は、国連憲章も国際法も無視した無法なものだった。この報復戦争を自民党政府は支持し、テロ特措法を制定してインド洋での給油活動など米軍への後方支援活動を行った。それがもたらしたのは、民間人死者4万7245人、アフガン治安部隊死者6万6000人、タリバン側死者5万1191人、米軍死者2448人というおびただしい犠牲者と、国土の破壊と憎しみの連鎖であった。

 今回の事態が示しているのは、報復戦争が破綻し、タリバンが全土を制圧し、米軍が撤退に追い込まれようとしているということである。その中で、米軍と共に戦争と占領に加わってきた諸国の関係者や、それに協力してきたとみなされる人々の安全が危機に直面し、大規模な脱出作戦を展開しているのである。報復戦争を支持し、加担してきた日本もタリバンからは「敵」とみなされ、在留邦人とその協力者の安全が脅かされる危険が生まれている。

 日本政府は、この戦争を支持・加担してきた自らの行動を、総括し、深く反省すべきである。そして、テロは国際法に基づく法の裁きで解決すべきであり、一方的な武力行使は破壊と憎悪をもたらすだけであることを銘記すべきである。この教訓を踏まえ、戦争法を廃止し、憲法にもとづく平和外交、テロ根絶のための人道支援で役割を果たすべきである。


 一、米バイデン政権の主導により、米国のほか、英、独、仏等が、自国民のほか軍の元通訳、現地協力者、家族ら数万人規模と言われる大規模な国外退避作戦を進めている。バイデン大統領は22日の記者会見で、アフガニスタン人協力者と家族らを退避させるための一時受け入れ国を拡大させるため、「20数か国以上の国々と協力を進めている」と指摘。まず各国の米軍基地などに避難民を輸送したうえで、セキュリティー面などの確認を経て、米国に受け入れる方針だと説明した。そして、当初の報道が米国防総省当局者の話として伝えた中には、その対象に在日米軍も含まれている。

 岸防衛相が20日の記者会見で「関係国の軍用機で退避をすることが最善との判断」と述べていたにもかかわらず、23日に急遽、自衛隊機の派遣を決めた背景には、米政府の要請があり、この米政府主導の大規模作戦の一翼を担うために派遣されることになったのではないかとの疑惑がぬぐいきれない。いったい、誰を、どのような規模で輸送しようとしているのか、政府は明らかにすべきである。

 しかも、自衛隊法84条の4では、在外邦人などの輸送は、「輸送を安全に実施することができると認めるとき」を条件に行うこととしている。空港と周辺では銃撃戦も複数回起き、武装勢力による航空機への攻撃の危険もあるとされる。そして、空港外は完全にタリバンが支配している。空港にアクセスすること自身が危険を伴うと指摘もされている。こうした中で、本当に安全に輸送できる条件があるのか。もし、武力衝突が起きた時に、自衛隊もそれに巻き込まれる危険があるのではないか。それを予期して、海外派兵の部隊である中央即応連隊を200人派遣しているのではないか。こうした疑念を拭い去ることはできない。

 こうした様々な疑問があるにもかかわらず、政府は国会にまともな説明もせず、審議も一切行わず、一方的に数百人規模の武装自衛隊の派遣を決定した。国会による自衛隊海外派兵の統制という点で、極めて由々しき問題である。

 政府はただちに臨時国会を開き、この自衛隊派遣に関する徹底審議を行い、国民の疑問に答えるべきである。私たちは、そのことを強く求めるものである。

カウンター〈21/06/18-〉

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