《声明》防衛大人権侵害裁判高裁判決を歓迎し、上告断念を求める

2020/12/10

声明・談話

《声明》
防衛大人権侵害裁判での逆転勝利判決を歓迎し、国・防衛大に対し上告中止を求める声明


2020年12月10日 日本平和委員会

 一、幹部自衛官を養成する防衛大学校で上級生からいじめや暴行を受けた元防大生が、国と教官の安全配慮義務違反を問うて損害賠償を求めた裁判の控訴審判決が12月9日、福岡高裁で下され、安全配慮義務違反を「予見は不可能」と棄却した一審判決を取り消し、国の責任を認め、約268万円の損害賠償を命じる逆転勝訴判決を言い渡した。これは、防衛大の人権侵害の実態の是正を求めて闘い続けてきた、原告とその家族、弁護団、福岡を中心にした支援者の、粘り強い運動が生んだ重要な成果である。日本平和委員会もこの問題を重視し、国会行動や各地での報告集会、機関紙誌などでの啓発、平和大会での訴えなどに取り組んできた。私たちは、国・防衛大がこの判決を重く受け止め、上告を断念し、防衛大での人権侵害を根絶する措置をただちにとることを、強く求めるものである。
 一、判決は、「防衛大の学生間指導において、上級生の下級生に対する暴力や不当な精神的苦痛を与える行為がしばしば行われていた」事実を認定。「防衛大は、学生間指導の実態を具体的に把握する必要があるとの意識を欠いており、その実態の把握のための調査などの措置を講じていなかった。また、学生間指導における暴力や不当な精神的苦痛を与える行為を防止するために、どのように学生を指導すべきかに関する防衛大内部での検討も不十分であ」り、加害行為に適切な指導をしてこなかったことを指摘。防衛大側の「安全配慮義務違反の責任」を断罪し、「安全配慮義務違反と控訴人(原告)の休学及び退校との間には相当因果関係があると認められる」と認定している。これは、裁判の中で原告と弁護団が厳しく追及してきた防衛大に蔓延する深刻な人権侵害の実態と、それを放置してきた防衛大の責任を認定したものであり、極めて重要な意義を持つものである。
 一、私たちは、この裁判を通じて明らかになった異常で深刻な人権侵害の実態は、いかなる理由であれ、一刻も放置することのできない問題であると考える。同時に、こうした実態が、現在政府が進めている、日米軍事同盟強化=アメリカと共に海外で戦争する自衛隊づくりの政策と深く結びついて進行しているのではないか、いかなる命令にも絶対服従し、いつでも戦場に出向くことのできる隊員を育成することと結びついているのではないかとの、深い懸念を表明してきた。私たちは、ここに改めて、国・防衛大がこの判決を重く受け止め、上告を断念すると共に、防衛大での人権侵害を根絶する措置をただちにとることを求めるものである。

カウンター〈21/06/18-〉

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